夕張シューパロダム見学会① 下流・出会い橋からの見学と解説
八ッ場ダム(行ってからあっと言う間に1か月経ってしまった・・)の訪問記もまだ途中だというのに、昨日行ってきた夕張シューパロのことが書きたいので書きます。
Twitterのひとり作戦タイムで写真だけ載せる?とか言ったけどやっぱり書きたいので書きます。
昨日の見学会、先日全国ニュースにもなりましたが、三弦橋が、夕張シューパロダムの運用開始から初めて湖面より上に出たということで急遽企画された見学会です。
9月17日~18日で弾丸稚内旅行へ行ってるときに情報を(珍しく)掴めたのでそっこー申し込みました。
ただそのあと北海道へ台風がきたりして雨も降ったので、29日よりも早く(再び)沈んでしまう予定となり、三弦橋(と森林鉄道トンネル)の見学会は23日(月・祝)へ繰り上がりとなりました。
ああああああその日は普通に出勤日。悲しいかなシフト勤務。これは参加できない・・・と思っていたら、29日も開催してくださると。
でも沈んでしまうんでしょ、何を見れるんだろう・・と思っていたのです。
ここで話はそれますが、私と夕張シューパロダムの話。
2013年のたしか9月に、建設中のシューパロダム、現役の大夕張ダムの横を通過して、ちゃっかりシューパロダムの建設中カードと記念の石炭のかけらをいただいていたのでした。
それから5年経ってダムにドはまりするわけですが、やっぱり夕張シューパロも私の中で特別なダムなんですよね。だって最初のダムカード(しかも建設中)をもらったダムなんだもの。
だがしかし、私が好きになってからの夕張シューパロは近くて遠い。
札幌から夕張は近いのに、ダムに近づけなかったのです。2018年9月6日の地震で管理用道路が閉鎖になって、だいぶ遠いゲートから眺めるしかできなかった・・・。
以下何枚か、2018年9月20日に訪問したときの写真です。
△よくみると「”新たな”通行止め」と書いてある。
△ダム管理棟への道も通行止、、これは地震より前から落石の危険で通行止めだったのかな? 私がハマる前なのでわからないけれど、とにもかくにもダム見学にでかけるようになってから、夕張シューパロダムへは近寄れなかったのです。
それが、今年になって、(いつからだか忘れたけれど)5月31日まで(平日だけだったか)9時から17時まで下流側のゲートが開放され、駐車場に車を停めて出会い橋まで歩いて行けました。
私が行ったのは5月30日で、その数日前まで常用洪水吐から放流(越流)してたんですけど私のときはなし。でも嬉しかったです。
△堤体と一緒に撮りたくて、天皇陛下(現上皇陛下)御在位三十年記念ダムカードも持参して撮りました!
△ゲートが閉まる17時間近なのと、独りなので熊が怖いのでビビってます。鈴めちゃくちゃ鳴らしてました。
△夕張岳も綺麗に見えて~の写真。
以上、私のこれまでの夕張シューパロダムの記録。
管理所行けない、天端歩けない、見やすい駐車場ない、直下も行けない・・などなど、あまり身近に感じることのできなかったダム。
それで今回、貴重な三弦橋が見れる機会ということもあって、たまたま休みだった奇跡も重なり参加申し込みしたわけですが、
今回は、三弦橋が沈んでしまったので、ダムを! 見せてくれるとおっしゃる!!!!!!! それはそれでとてつもなく有難い!
長くなりましたがここまでが前置きです。
それでは本編、レッツゴー!
13時30分までに、ラッセル車が展示されてるとこ(GoogleMapだと三菱大夕張鉄道車両保存地)の横にある旧インフォメーションセンター(現在はGoogleMap表示であったカフェR452)集合。そこからマイクロバスに乗って見学へ向かいました。
めちゃくちゃ弁が立つ副所長さんのガイドを聞きながら向かいます。まずは下流からダム堤体全体のベストショットがとれる出会い橋の上でバスから降ります。
さっきまで雨が降っていたのに青空!!!
秋っぽい雲も薄くかかっていい感じです。
夕張シューパロですが、繰り返しご案内がありましたので、堤高が110.6メートル、堤頂長が390.0メートルというのはインプットされました(いただいたパンフにも書いてある)。
△右側建物は発電所(北海道企業局)、本日の放流は発電所から出てくる2.5t/秒(放流の度合いからすると最低レベル)。
常用洪水吐から越流しているわけでもなく、奥の利水放流口から水しぶきをあげてジェットフローで放流されているわけでもなく、発電所からも大きい横長からざぶざぶ放流しているわけでもない。
ちなみにですが、発電所横の手前の横長からの放流があるときはこんな感じ(2019年5月30日)。
彩り@ayakaaaand2019.05.30 https://t.co/xH3CCFkguI
2019年09月29日 22:32
水位も違い、川の雰囲気が異なります。
今日の発電放流が少ないとはいっても、1秒間に2.5トンですよ? 1秒間。その放流が夕張川を維持していると思うと不思議だし面白い。
△写真右上に見えるのは利水放流操作室。その川側に大小それぞれ2つの穴が。こっちから見るとどちらも小さく見えますが大きい方は直径2.6メートル。私があの穴の中に立っても、上に手を伸ばしてもそれより大きいんですよね。立ってみたいけど、放流されたら吹き飛ぶなあとか考えながら眺める。
川の水位が低いからこそ見えるあれこれも面白い。
利水放流の大きい方はジェットフローで減勢するそうですが、常用&非常用洪水吐からの放流のは減勢工で勢いをそぐのですね。
(今見て気づいたけれど、副ダム?の色が真ん中できれーーーに色が分かれてる。)
副ダムの下流側にある低い構造物(副々ダムとかいうのかどうか)の切れ目も面白いですね。ちゃんと意味があっての構造なんでしょうね。
△いつの間にかパネルが準備されていて(私があれこれ写真を撮っている間のこと、そもそもチームワーク抜群です)、パネルを手にとりながら、そして出会い橋から堤体を眺めながらの解説が始まります。
以下、解説していた内容は緑字で表記します。また一字一句正確なものではなく、解説された内容の概要です。あと話したこと全部を漏れなく表記するものでもありません。
昭和36年、今見ている夕張シューパロダムの上流155メートルのところに大夕張ダムが建設された(当時はもちろん夕張シューパロダムないですよ)。高さ67.5メートル、有効貯水量8050万m3、北海道の農業のダムで最大だった。かんがい用水+発電。
△かんがい用水の受益面積の図。
石狩川の合流地点から80km上流に大夕張ダム。夕張川沿いの水田に水を供給するために作られた。
今は夕張川は石狩川から分かれている(石狩川に合流する)けれどもともとは千歳川の支流だった。
千歳川は浅い川、勾配が緩い川。支笏湖は北海道の中でも雨が多い地域で下流でたびたび洪水が起きた。
大正から昭和の初期(北海道開発局ができたのは昭和26年)、その前から工事して今の夕張川へ変えた。
ここで!土木遺産カードのことが思い出されました。
△引っ張り出してきた、夕張新水路の北海道選奨土木遺産カード。なるほど理解が深まります。
受益面積は、夕張市、栗山町、由仁町、南幌町の12000ha。
△のちほどパネルをとらせていただきました。
旧夕張川は長沼町と南幌町の間を流れていたようです。
昭和40~50年になり農業の仕様が変わり、機械化がすすんだので水が足りなくなった。そこで大夕張ダムに嵩上げ(7m)の計画が持ち上がった。
千歳川に4つあるダム、王子製紙のダムが1~4まである。(戦前に作ったダムなので爆撃されないよう色が塗られていたダム。)千歳川も千歳・恵庭の農家のためにダムをつくりたいが、つくれない。そこで夕張川から「道央注水工」という用水路をつなげて千歳や恵庭にも水を供給したい(あわせて24,000ha)、となると大夕張ダムの嵩上げは14m嵩上げしようと。
そのころ、昭和56年8月2日、北海道は未曽有の大雨が降った。石狩川氾濫、江別市みんな水浸し、夕張川も長沼辺りで決壊(56年災害)。洪水対策の必要性高まる。
今現在、雨竜川の調査が始まり、雨竜第一ダムの嵩上げ工事が検討されている。その隣幾春別川、桂沢ダムの嵩上げ工事を行っている(新桂沢ダム)、空知川には滝里ダムが建設された。千歳川にはダムの建設ができない。じゃあ夕張川は農業用水の供給に加えて洪水対策もできる大きなダムにしよう。
ところがそうなると、大夕張ダムの横の地盤は痩せていて、14mの嵩上げがギリギリ。(現在の夕張シューパロダムは大夕張ダムから約40m高い)
大夕張ダムにあった二股発電所(北海道企業局)、夕張川にはあと4つ発電所がある(そのうち2つは北海道炭鑛汽船株式会社:北炭の発電所だったが北海道企業局が買い取った、清水沢には火力発電所もあった)。現在は上流からシューパロ発電所、清水沢発電所、沼ノ沢発電所、滝の上発電所(これからの季節、紅葉が見ごろ。千鳥ヶ滝は夕張川に唯一の滝!)、川端発電所。
△シューパロ発電所。
タービン2つある。ダム式なので上から下に水が流れてタービンが回転する。大きい方のタービン(1号機)は毎秒38トン、小さい方は毎秒2.5トン。河川維持のため、最低でも2.5t/秒放流している。発電が止まっても奥の利水放流口から放流がある。
シューパロダムの特徴の1つは洪水吐にゲートがないこと。第4類のダムである。
第一類はゲートの開閉で調節、第二類は堆砂が多くなったダム、第三類はダムの規模に対して設計洪水位が大きいダム、そして第四類は自然越流(量の調節はできない)ダム。
(※見学会の性質上、かなりざっくり説明されています)
常用洪水吐は高さ7m、横が12.5m、そこから毎秒900t放流されてまだまだ水位があがったら非常用洪水吐からも放流。非常用洪水吐は高さ3m、横12.5m。全部から溢れたら毎秒3,000tの放流。
例年5月の上旬は常用洪水吐からの放流が見られる。
△夕張シューパロダムができるまで、毎年のように水不足が発生していた。(左下の棒グラフが自主節水日数、折れ線が節水率)
夕張シューパロダムができてからは一度も水不足になっていない。
今年は北海道は渇水だった。漁川ダムは田植えの翌日から40%の節水、降雪が例年の4割だったから。北の方、朱鞠内は平年の6割しか雪が降らなかった。夕張は平年よりちょっと少ないくらい。雨も全然降らなかった。なので桂沢ダムでも節水、石狩川本流でも節水があった。
そしてこのダムでも足りなくなった。7月頭には基準のラインを下回ったが、水の放流を維持した。下流では節水がなかった。
漁川ダムでは節水が多かったので、現在つながっている道央注水工(全長31km・最大口径3,000mm)で夕張川の水を漁川へと検討されたが降雨がありされなかった。
夕張川は、350t/秒の流量を超えると溢れるところが出てくる。この数字には敏感。運用開始から5年で4回この量を超えた。今年も8月8日9日も大雨で流入量が290t/秒となった。放流はせず全部貯めた。容量でいう1,000万t。水深で1.2m上昇。キャパの大きいダム。農業用水を不足させない、洪水調節を行う!
発電所の最大出力は28,000kW。世帯数だと26,000世帯分くらい。夕張・栗山・由仁・南幌・江別の半分くらいを賄える。さらに下流には4つの発電所がある。
去年のブラックアウト、ここにシューパロ発電所があるのに夕張も全面停電。水は十分あったので発電することは可能だったが、電気の受け手である北海道電力側が遮断されてしまったのでここの発電も止まる。夕張では昨年11月に(たまたま)これまで単線だったのをループにしたので前回と同じことが起きても夕張は停電しない。
ダムは3日間、自家発電できる。
このダムは上水道の用水も。石狩東部広域水道企業団(本部は恵庭市)、千歳・江別・恵庭・北広島・由仁・南幌・長沼に提供、毎秒0.3tを水道用水にしている。
このダムは発電、水道、農業、河川洪水調整、4つの目的をもった多目的ダム。先ほど述べたゲートレスの特徴のほか、2つめの大きな特徴は「共同ダム」であること。
普通のダムは「特定多目的ダム」、河川(の洪水調整する)ダムに農業・水道・発電の役割をちょっと載せてる(ようなイメージ)。国土交通大臣(国土交通省)のダム!ということになる。ここ夕張シューパロダムは4つ全部権利を持っている。国土交通大臣(河川)と農林水産大臣(農業)と北海道知事(発電)と恵庭市長(水道)の4つの共同名義。全国でも珍しいタイプ。北海道には2つあり、夕張シューパロダムと、新十津川町にある徳富ダム。
出会い橋上での解説は上記のような感じでした。見学者の方にわかりやすく説明しているので、言葉や言い回しが正確ではないかもしれませんのでその点ご理解ください。
文字で見てもよくわからなかったり興味をひかないことも、実際にダムを目にしたり資料を見ながら解説を受けるとすんなり入ってきたりしますよね。見学会序盤からかなり盛沢山で脳みそ爆発しそうでした。
今回の見学会、もともと三弦橋と旧森林鉄道の見学会として募集されたものだったので、必ずしもダム好きさんだけ参加されているわけではありませんが、ダムがもっている機能、担っている役割をわかりやすく巧みな話術(副所長さんほんとにすごいです)で紹介されていて、みなさん楽しまれていたように思います。
出会い橋の上であっと言う間に30分弱経過!
知識も増えて、どんどん夕張シューパロダムが身近に感じられてきました。
「写真はここだけです!!!」と仰るので、ああ普段入ることのできないエリアはもう撮影できないのね、と思ったら、単にデカすぎる堤体がうまく収まる撮影スポットはここが最後ですよ!!という意味でした。
そしてそれだけでなく、のちのち歩いた天端の上も監査廊も取水設備のサイフォンのあれこれも全部撮影可能、そしてSNS・ブログに掲載OKとのことでした。たくさん撮ってきたのでなるたけ早くアップします。
△出会い橋上で再びマイクロバスに乗車し、右岸の管理用道路をのぼっていきます。写真は下流方面。すっかり秋の気配です。
ありがてえありがてえ。
△ぐんぐんのぼる。
△そんなこんなで天端の右岸端へ到着。ここではバスを下りないので車窓から撮影タイム。これが限界(笑)
△右岸のリムトンネル口。右も左も見たいもの撮りたいものがたくさんですよ・・・。
続く。