世界と人生を彩るもの

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本 我孫子武丸「殺戮にいたる病」

ネタバレありの感想です。

読後の評価は★★★★☆。

読んで損なし、名作!






図書館で借りてきて読みました。

予約からしばらくして借りたので「どうして読もうと思ったのか」を忘れたころに読めたのが良かった。

というのも


↓(ほんとにネタバレします)










これは叙述トリックのミステリーだから。


たまたまオススメ本とか、本が原作の映像化作品について調べてるときに、「映像化ができないと言われてる作品」として紹介されていた。

叙述トリックは、文章の書き方によって、人物を誤認させる手法であるから、映像になったが最後、「勘違いしようがなくなる」というのが映像化できない理由というわけ。


叙述トリックだから映像化できない、というのをすっかり忘れて読み始めた私は、犯人目線のグロい殺人シーンを読んで、「グロすぎて」映像化できないって言われてたのか~と勘違いしたまま読み進めた。

そして終盤の終盤、(イニシエーション・ラブじゃないけど最後の2行で)自分の思い違い(←まんまと叙述トリックにのせられていた)ことを知って愕然とする。そのあと少し解説のようなパートが入るので、厳密にいうと「最後の2行」ではないのですが。

言われてみれば、「なんかこの日本語の言い回し変じゃない?誤植?」って思ってたところはいくつかあったので、読み手としていい線いってたはずなんだけど、まんまと食わされました。

久しぶりにミステリー読んだけれど、2日間に分けて読もうと思ってたのに、中盤を過ぎたあたりから読むのを止められなくなってしまって、睡眠時間を削って読んでしまった。ミステリーあるある。


この作品は東京で次々に若い女性が惨殺されます。東京に家族も友人もいないときに読んだらただのフィクションなんだけれども、今は友達も妹も東京在住なので、他人事じゃなくて怖くて震えた。とりあえず妹には、甘いマスクの男にいきなり話しかけられても、浮かれて飲みに行ったり車に乗り込んだりホテルに行っちゃだめ!と連絡した。

犯人目線の殺人シーン、死体の損壊シーンがあるのでグロい。グロが苦手な方は無理かも。

ストロベリーナイトが大丈夫なら行けるレベル。





このあと具体的なネタバレです・・・






この本の登場人物は、
妻をなくした元刑事
犯人の稔
稔の家族である雅子
の3人がメイン。

元刑事は、妻が入院していた病院で知り合った看護師が元刑事の家から自宅へ帰る途中に殺され、その妹から犯人探しに協力してくれないか頼まれる。

殺人は犯人である稔の視点で繰り返される。

雅子は巷で騒がれている殺人事件が息子の仕業ではないかと疑い追いつめられていく。

殺された看護師の妹が、姉とそっくりな容姿をエサに犯人を見つけようとして事件は結末を迎える。


その結末とは、雅子(と読者)が息子ではないかと疑っていた犯人は雅子の夫だった、というもの。

息子信一は自分の父親稔を疑っていた。最後の事件(殺人未遂)の際に、実の父親に殺されてしまう。読者からは犯人と疑われ続け、父親に殺されてしまうなんてかわいそすぎる。

そこで殺された人物は雅子が「息子」だというし、でもその息子は「稔」じゃないし、犯人は捕まっていない。そんなびっくり展開の最後の数ページはものすごい集中力で読みました。

同じ家庭内で存在感のなかった、(読者視点からの)父親、あるいは夫が犯人であることに衝撃を受けた。

これがまたうまくだまされてしまうんですよね。

息子が大学生だし、最初に犯人が被害者をひっかけるシーンが大学の食堂から始まるのですっかりその息子を犯人として読み進めるのに、犯人は大学教授である父親っていう。。。

そして父親(いい年の大人)とわかってから思い返すと、殺人を繰り返している事実そのものがさらに怖くなる。(大学生が殺人を繰り返しても社会に順応できない最近の若者~くらいに思えますけど、結婚して家庭があって、息子も娘もいる大学教授が、その辺で声かけた女性をホテルに連れ込んで殺害して死体としたり死体損壊したりするっていうその感じがほんとうにこわい。)

最後にその誤認に気付いた瞬間も衝撃的なシーンだしな・・・(言うのも憚られる)。